以前,同じ著者(出口保行さん)の『犯罪心理学者が教える危ない子育て』を紹介した。
子育てのよくある場面での関わり方を,子育ての4タイプに分けて解説してくれている。実際に著者が犯罪心理学者として子どもと関わる中で得たデータや経験をもとに書かれているので,根拠もしっかりしていて説得力もある。
出版された順番としては,今回紹介する『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』のほうが先になる。
実際の事例をもとに,具体的にどのような言葉がけが【危ない一言】なのか,その言葉がどう子どもの呪いとなるのかについて分かりやすく書かれている。
『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』概要
出口さんという人は,官僚経験もありながら実際に少年鑑別所や刑務所などで心理分析も行っている。そもそも東京学芸大学で教育関係や発達心理学についても修められているので,子育てや教育の分野にも精通していることも伺える。
2人の娘さんもいるということや,著者の父親は教育者だったことなど,ご本人自身の経験も少し触れられるので親しみを感じる。
印象に残った言葉を引用しながらこの本を読んだぼくなりの感想をかいていく。実際にどんな言葉が【呪う言葉か救う言葉か】といったことは,この本を手に取ってご自身で。
この本から学びたい!子育てに活かしたい!という方はぜひご一読を。
子ども自身の気持ち
大事なのは子どもの主観的現実です。どんな言葉を使うかも大切ですが,子どもがどう受け止めているかに配慮しているかどうかも大切です。
『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』 出口 保行 著
本人が出来事をどう捉えたかがたいせつだという。大人にとってはどうとでもないことを子どもがこの世の終わりだというくらいに受け止めてしまうことはよくある。
子どもにとっては一大事なのに,「大したことないよ」とか「大丈夫だよ」と相談にのらず,話を聞きもしないのは,子どもの気持ちを無視していることになる。
また,親である自分が子どもに対して正論をぶつけても,子どもには伝わっているのか?しっかり聞いてくれているのかを考えなければならない。
❝子どもは反省しているフリをするのはうまい❞,大人が怒ればとりあえず❝黙って聞いているフリをすればいい❞,意識してこうしていなくても,無意識的にやっている場合もある。
「あ,怒られたな」と思うだけで,自分のどんな行いが良くなくて,今後どうしていけばいいのか考えていないこともある。
だからこそ,子どもがどう受け止めたか,どう捉えたかの❝主観的現実❞がたいせつというわけである。
親がいつも【よかれと思って】言っていることややっていることは,大抵子どもの気持ちを考えず,親本位になることが多い。
気をつけたいと思った。
役割で育てない
役割を期待する声かけは,期待にこたえようとして頑張る「いい子」ほど,苦しむことになります。
『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』 出口 保行 著
対して❝本人の個性・性質に基づく期待ならいい❞そうだ。
「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」「お姉ちゃんなんだからやさしくしなさい」というのは,子どもにとっていい迷惑ということだ。
役割を押し付けることは個性をつぶすことだとも指摘している。
ぼくはいま,子どもが2人いるが,上の子(お姉ちゃん)によく言ってしまっている。子どもは別に生まれたくてはじめに生まれてきたわけでもないし。自分で選べないことに対して押し付けるのはよくないと思った。
ただ,その役割のおかげで子育てがやりやすくなったという親もいるのではないだろうか。「下の子の見本になってほしいから,ちゃんとして!」みたいなことをついつい口走ってしまう。
「お姉ちゃんだから○○」といった褒め方ではなく,「小さい子の面倒を見るのが得意でやさしいから○○」といったように,個性やその子自身のもつ良さを中心に育てたいものだ。
がんばればできる!
学習性無力感に陥らないためには,やはりプロセスを褒めること。結果がどうであれ「やってみよう」と思ったこと,そして少しでも行動に移したことを褒めます。
『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』 出口 保行 著
【学習性無力感】というのは,自分が何してもダメ,努力してもムダという状態のこと。
❝行動しても結果が出ないことを何度も経験するうちに,やる気を失い行動しない状態❞をいう。
ある時期の自分自身がこんな状態だったような気もする,という人もいるのではないか。ぼくはそうだと思う。特に勉強に対しては,小学校高学年から大学受験までずっとそうだった気がする。
何が原因で自分がそうなったかというのは,ここで語るべきことではないので置いておくとして,自分の子どもが学習性無力感にならないためにどうすればいい!?
それはプロセスを褒めること。簡単なようで難しい。子どもが行動しているまさにその時,そのチャンスを逃さず,褒めることが大切だという。
なんらかの点数や合格・不合格でまるで自分のすべてが決まるかのような現実だらけの中でも,行動を見ていてくれる人がいるというのが,次につながるようだ。
そうしていくと,結果が出なくて落ち込んだとしても,「次はこういう方法でやってみよう」「やり方を変えてみよう」と前向きに努力できるようになるのだと。
よくない【ごほうび】
本人がやりたい・頑張りたいと思って行っているところに「できたらご褒美をあげるね」と言ってしまうと,行為の目的が「やりがい」から「ご褒美(報酬)」に変わってしまいます。すると,次から報酬がなければやらない,というようになってしまうのです。
『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』 出口 保行 著
これもよくやってしまう。やってもらえてうれしいからご褒美をあげてしまうけれど,「パパを助けたい!」という思いでやっていたのに,「ご褒美くれるから手伝おう」に変わるわけだ。
ご褒美だけでなく,褒めることにも注意が必要だそうだ。
褒めることもそれが目的化しないように気を付けなければならない。ただ褒めればいいわけではないのだ。
親自身が子どものどこをどう褒めたいのか,褒めることでどうなってほしいのか明確にしておくといいのかもしれない。
出口さんは,意欲があること自体を褒めるのはものすごくいいと書いている。さらに意欲が高まるからだ。
❝肯定するというのは,褒めちぎることではない❞とも書いている。よく子どもの日々の行動を観察したり,関わったりする中で,本人なりの努力や成長を認めることで子どもの自己肯定感は高まっていく。
この本を読んだときも,こうして書いている今も自分の子育てを振り返ってみると,反省するばかりである。出口さんは反省ではなく,内省が大事だとも言っている。
【内省】…自分自身の心に向き合い,自らの言動や考え方について客観的に振り返って分析すること
ぼくも日々,子どもとの関わりを内省したいと思った。
この本の良さ
この本の良さは,子育ての際に,具体的な言葉を例に何がいけないのか,著者の経験やデータに基づき語られている。
このブログで触れたのはごく一部であるので,ぜひ実際に読んでほしい。
「よかれと思って」
「みんなとなかよくしなさい」
「早くしなさい」
「がんばって」
「何度言ったら分かるの」
「勉強しなさい」
「気をつけて!」
本当に,子どもの時に親や先生,関わる大人たちから何十回,何百回も言われたこの言葉たち。
この言われたら嫌な言葉を大人になり,親になり言ってしまっている自分がいる。
言っていれば楽な言葉なんだろうな。楽だからこそ何も生まない言葉でもあるのだろう。
この本には,この言葉が将来どんな呪いの言葉となって子どもを悪い方向に導いていしまうか細かく具体的に書かれている。
本当に言葉によって人は作られているのだなと痛感する。自分の発する言葉に意識を向けたいと思った。
子育てに関わらず,人と関わるときには大切なこと。
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