【すべての親が】『発達障害「グレーゾーン」その正しい理解と克服法』【知っておくべき知見】

育休中に読んだ本
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適切な言い方かどうかは分からないが,「発達障害」という言葉が【身近】になってきたような気がする。ぼくたち(30代半ば)が子どもの頃は,当時の大人もあまり馴染のない言葉だったかもしれない。その言葉だけでマイナスのことを想像させ,事によっては偏見や差別に晒されることもあっただろう。かなり扱いの難しい言葉だったはずだ。

しかし,時代は変わった。人の数だけ,人格や性格,性質というものがある。それを,生き方の困難な部分を抜き出して共通項を見つけ,名前をつける。そんなふうにしか思っていないこともあった。

医療技術や科学の進展は,世の中に出たばかりの頃,人の理解をはるかに超えている場合が多く,混乱や混迷,無秩序をもたらすことがある。それによって不当な扱いを受ける場合は往々にしてあったはずだ。

かくいうぼくたちも,いくら身近な言葉になったとはいえ,正しく理解しているかといわれると,むしろ逆で,中途半端な知識しかもっていない。(知識と呼ぶにはあまりにも乏しい)

正しく理解していないことで,自らが困ることもあるし,子育てに悩むこともある,人を傷つけるかもしれないし,避けることができた失敗を繰り返してしまうかもしれない。

「発達障害」について正しい知識を身につけ,自らに当てはまるところを探すもよし,身近な人との関係に活かすもよし,子育てに結びつけてもよし,この本を読むことは,少なくとも今後の人生においてプラスにしかならないと断言できる。


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『発達障害「グレーゾーン」その正しい理解と克服法』の概要

 『発達障害「グレーゾーン」その正しい理解と克服法』

SBクリエイティブ (2022/2/5)

著者:岡田 尊司

1960年、香川県生まれ。精神科医、医学博士。東京大学哲学科中退。京都大学医学部卒。同大学院高次脳科学講座神経生物学教室、脳病態生理学講座精神医 学教室にて研究に従事。現在、京都医療少年院勤務、山形大学客員教授。パーソナリティ障害治療の最前線に立ち、臨床医として若者の心の危機に向かい合う。 小説家・小笠原慧としても活動し、横溝正史賞を受賞した『DZ』などがある(「BOOK著者紹介情報」より

発達障害の兆候はあっても診断はおりない「グレーゾーン」のケースがいま増えている。「グレーゾーン」は障害未満でありながら、ときに障害を抱えた人よりも深刻な困難を抱えやすい。だが、「グレーゾーン」と判定されるケースは幅広く、適切な対応ができていないことも多い。大切なのは、その人の特性をきちんと理解し、適切なサポートにつなげていくこと。本書は、豊富な臨床経験をもつ精神科医が「グレーゾーン」の生きづらさの正体と対策についてわかりやすく解説する。(amazon.jp商品解説より)

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本のかかれ方・特徴

精神科医として豊富な臨床経験をもっている著者が実例を踏まえてそれぞれのタイプ別にまとめている。

実際の経験や日常の場面を例としている記述が多いので,イメージしやすい。よくわかりもしない素人の自分でさえも,かつて出会った人を想定して,あの人はこういうタイプの人だったのかと思ってみたり,自分自身の幼少期を思い浮かべ,自分もそうだったのではないか,と妙に納得してしまったりしながら読み進められる。

漢字や横文字,○○タイプ,○○性○○など,たくさん出てくるので難しく感じるところもある。難しく感じるというか,ごちゃごちゃになってくる。よくわからないものに出会うと,頭が混乱する自分は,何かのグレーゾーンなのか,発達検査なるものを受けたら数値が低い項目があるのではないか,とびくびくしながら読んでいたところもあった。

そういった場合は,自分が気になるタイプのところだけを読むといいかもしれない。その対処法なども載っているので,すべて読む必要はないかもしれない。

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「グレーゾーン」という言葉

冒頭に「発達障害」という言葉が身近になったとかいたが,それに伴い「グレーゾーン」という言葉もよくつかわれるようになった。

その「グレーゾーン」の理解と克服法についてかかれている本である。

この「グレーゾーン」という言葉は,どんなふうに捉えているだろうか。ぼくは,ある意味では「救い」であり,「逃げ」でもある無責任で便利な言い方だと感じる。

発達障害だろうと思って検査してみて「発達障害ではなく,グレーゾーン」と言われたら,少し安心してしまう人もいる気がするし,逆に全貌が明らかにならずより不安を強めるかもしれない。

仮にわが子が「グレーゾーン」と言われたら,どうするか。「様子見でいいのかな」となってしまうかもしれない。まさにそのことがかかれている。

多くのケースで言えることは,グレーゾーンと診断された場合,「発達障害でないから安心していい」という意味ではないということだ。

むしろ,これからの働きかけや取り組みによって大きな違いが生まれるため,しっかりとサポートしていく必要がある。

(中略)

子どものケースでは,軽度な課題であっても,できるだけ早くから療育やトレーニングを行うことが,予後を改善することにつながる。

 『発達障害「グレーゾーン」その正しい理解と克服法』第1章 グレーゾーンは症状が軽いから問題ない? 岡田尊司 著

「グレーゾーン」だからこそ今後が大事で,できるだけその人の症状を正しく理解し,適切なサポートを行っていくことが必要だということだ。

自分自身も,なんとなく「グレーゾーン」だと思うことが多々あるが,そういう「自分はグレーゾーンかもしれない」と思う人が急増しているようだ。実際は調べないことには分からないが,「グレーゾーン」について正しく知ることで,活かせることがたくさんある。

もしかしたら,自分の子がそうであるかもしれないし,もしそうだとしたら,正しく知り,注意をはらって子育てをする必要がある。

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世界の著名人もグレーゾーン?

この本の特徴は,世界でも有数の著名人のグレーゾーンについてかかれていることだ。あんな世界的に有名な人も,影響力のある人もグレーゾーンだったのか。と知るだけで,勇気づけられる。ぼくもそう思った。「グレーゾーンだからダメ」とか「ただ生きづらい」とか,そういったことは一切ない。

どんな人間にもちがいはあるし,得意なことも苦手なこともある。それが,グレーゾーンによるものだろうと,特性だろうと関係ない。

大切なのは,自分を理解し,どんな環境に身を置いて,どう生きていくかだ。

感心したのは,多くの文献を読んだり,取材を経てかいているのだろうということ。その著名人のグレーゾーンについて,生い立ちから人間関係,学生時代の特性などものすごく細かくかかれている上で,グレーゾーンのタイプを解説してくれている。

生い立ち,家庭環境,育てられ方,学校での友人関係,社会へ出てからの職場での立ち位置など自分のことを振り返りながら書いていけば,自分がどういった特性なのかがよくわかるかもしれない。

ちなみに本書で挙げられている著名人は,以下である。言うまでもなく錚々たる顔ぶれである。

  • ビル・ゲイツ(マイクロソフト創業者)
  • 村上春樹(作家)
  • フランツ・カフカ(作家)
  • ジェフ・ベソス(アマゾン創業者)
  • イーロン・マスク(スペースXその他多数 創業)
  • 夏目漱石(作家)
  • ダニエル・ラドクリフ(俳優)
  • トム・クルーズ(俳優)

どんな人間にも困難や苦境,挫折があったと思うが,彼らもそうなのだ。

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親としてやってはいけないこと

いつの時代の,いつの場面でも言われていそうな言葉だが,人は簡単に自信を失うし,他人の自信を奪えてしまう。

学習障害にしろ,その他の発達障害にしろ,失敗と叱責の積み重ねがその子の自信を打ち砕き,コンプレックスと自己否定を植え付けていく。

そうなると,できるはずのこともできなくなってしまう。

『発達障害「グレーゾーン」その正しい理解と克服法』 岡田尊司 著

子育てをしていると,子どもに対して,「なんでそんなこともできないんだ!」と思ってしまったり,実際に言ってしまったりすることがある。

それは,怠けているからできないのか,発達段階上できないのか,発達障害だからできないのか,できるような状況にしてあげられていない親の責任なのか分からない。

ただ言えるのは,「できない理由」が子ども自身のせいであるとは限らないし,原因はひとつではないかもしれない。今だからできなくて,数か月後にはできるかもしれない。

原因や理由が分からないまま,叱責したり,失敗という経験をさせすぎて自信を失わせていないか,自分の行動を反芻しなければならない。

子どもは3歳と1歳だが,すでに自信を失わせ,やる気を奪うような言葉かけをしているような気がする。親としてどうかと思ってしまう。

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最もたいせつなのは自信

本書はありがたいことに教えてくれる。そんな親として未熟なぼくが心に留めておきたいことでもある。

では,自信を取り戻すにはどうしたらよいのだろう。

その近道は,本人が得意なことや好きなことに取り組ませ,そこで達成感や成果を味合わせることだ。

『発達障害「グレーゾーン」その正しい理解と克服法』 岡田尊司 著

これもよく言われていることかもしれないが,これこそ親が子どもにしてあげられることだろう。

子どもは,ある程度何にでも興味をもつ。飽きてしまうものもあれば,飽きずにずっとやり続けることもある。

そうした機会をたくさん与えてあげる中で見つけるもよし,いろいろ与えすぎて混乱させたくなかったら,じっくり子どものペース,親ができる限りのペースでやってあげてもいいのではないだろうか。

まずは,得意なことも苦手なことも,良いところも改善すべきことも,親である自覚をもって子どもを知ることが必要だ。

そうしたら,その特性に合った適切な関わりをしていけばいいのだろうと思う。

そんなことを教えてくれた本書に感謝しかない。

ぜひ一読されることをおすすめする。


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