本を読むから考えが深くなる,なんていうことはあまり考えなくてもいいんじゃないでしょうか。本を読むと立派になるかというとそんなことはないですからね。読書というのは,どういう効果があるかということではないですから。それよりも,子どものときに,自分にとってやっぱりこれだという,とても大事な一冊にめぐり逢うことのほうが大切だと思いますね。
『本へのとびらー岩波少年文庫を語る』宮崎駿 著 1 自分の一冊にめぐり逢う
育休中は,仕事から離れることができる。育児と家事が生活の中心となる。その中で,仕事をしていた頃には触れられなかったものに出逢えることが最大の喜びでもある。
育休だからというわけではないが,育休に入って,自分が出会えてよかったと思う本がいくつもある。
その中で,とりわけ育児に関わり,自分の今後の人生にも大きくプラスになるような本を3冊紹介したい。
この3冊の本に出逢ったおかげで,子育て観というか育児論みたいなものが大きく変わったと同時に,確立まではいかないまでも形を帯びてきたように思う。
子育てには,失敗や間違いはあるけれど,正解はない。成功だったかどうかなんてものもずっと時が経ってなんとなく感じることができるもの。
ある意味,勝ち負けのない途方もない戦いなのだ。自らをも成長させてくれることは言うまでもない。
『本へのとびらー岩波少年文庫を語る』/宮崎駿 著
50冊の児童文学を,アニメーションの巨匠 宮崎駿が紹介する本書。監督自身が,どんな本に,どのように影響を受けてきたか,が書かれている。
直接的に,育児に関わるかというとそうではないので,いわゆる育児のことを具体的に知りたい,学びたい人には,次項の『子どもはみんな問題児』や『好きッ!絵本とおもちゃの日々』をおすすめする。
独身の頃は,作品作りの根源を見たような気がして感心したが,子どもができてから読むと,自分の子を具体的にイメージできるので,子どもへの考え方が学べる。
「生まれてきてよかったんだ」というのが児童文学
児童文学の根幹にあるテーマは【生まれてきてよかった】ということが何度も語られる。
ジブリ作品も常に【この世は生きるに値する】というテーマで作品が作られている。
これって,子どもを育てる大人として,親としては常にもっていたい思いでもある。
「生まれてきてよかった」「生きていていいんだ」「生きていきたい」そんなことを子どもに抱かせたい。
もちろん,大人になると逆のことを思う経験を何度もする。「しんでしまいたい」「生まれてこなければよかった」「生きていてはいけない」
でもそんなことはない。いろいろあるけれど,やっぱり「生まれてきてよかった」と。
『子どもはみんな問題児』/中川李枝子 著
絵本の大名作,世代をこえて愛される『ぐりとぐら』の作者であり,もともとは保育士。日本一の保育を目指していた頃から培った子どもとの関わり方,考え方などが語られている。
とにかく読みやすい。あまり読書に慣れていない人でも,すんなりとあっという間に読める。
育児に悩む人,子育て初心者のぼくのような人にぴったり。
育休パパもまずはこれからぜひ読んでもらいたい。
45のメッセージが1,2ページで書かれているので,すらすらと読める。
どの子もみんなすばらしい問題児
子どもは,欠点だらけで絶えず成長している。成長したくてたまらない。だから,いろいろなことをする。あらゆることをする。大人が考えつかないこと,考えてもしないこと,想像の遥か上をいく。
【子どもらしいのがいちばん】読めば必ず子育てに生かせると思う。
悩んでいたこと,焦っていたこと,解決するかは分からないけれど,確実に子どもに対してより穏やかに接することができるようになると思う。
パパさんだけでなく,ママさんにこそ読んでほしい一冊。
絵本についてもたくさん触れられていて,お子さんに買ってあげる絵本に悩んだ時は,参考になると思う。
絵本は,読書の入り口であり,人生の入り口とも語っている中川さんの言葉は,子育てをする者なら必ず心に刻みたいと思えるはずだ。
『好きッ!絵本とおもちゃの日々』/相沢康夫 著
3冊の中で,いちばん知られていないであろうこの本。本当に,育休中に出逢えて良かった本。
本といっても,漫画。これは子育てパパ,育休パパには必ず読んでほしい!!!
著者の相沢康夫という方をご存知ない人は多いかもしれない。ぼくからすると,おもちゃ界のスーパースターであり,伝道師でもある。
おもちゃデザイナーにして,積み木パフォーマーでもある。というか,自称されている肩書はこんなものではない。
おもちゃや絵本を愛しすぎて,自分でデザインもして製品化もしているし,販売もしているし,ショーもやっている最強の男だ。
そんな彼が贈る子育ての実体験を赤裸々に描いた漫画集,その中でたくさんのおもちゃや絵本の紹介がある。これも見所!
おもちゃや絵本は親子をつなぐ
絵本もおもちゃも道具にすぎない。
では,何のための道具か?と言えば,親子がかかわるための道具だろう。
大事なのは道具そのものではなく,かかわりなのである。
だから,どんなにつまらない本でも,どんなにくだらないおもちゃでも,読んであげないより,また一緒に遊ばないより,かかわってあげた方がいいにちがいない。
引用:『好きッ!絵本とおもちゃの日々』オヤジの子育てについて 相沢康夫
これほどまでにおもちゃを愛している相沢さんが言う。おもちゃや絵本は道具にすぎない。親子の関わりをつなぐものであると。
本書の中では,相沢さんがおもう素晴らしいおもちゃや絵本が多数紹介されている。絵本に関しては,中川李枝子さんおすすめのものと重なる部分が多い。つまらない絵本は時間の無駄という思いも一致している。
絵本もおもちゃも与えるだけではだめ。
与えた側にも責任がある。より刺激の強いキャラクターものの,そう遊ぶしか遊び方がないものだけ与えていては,子どもの思考力も想像力も育たない。
親子の関わりをより上質なものにするために,それでいて子どもの成長により良い影響を与えるために,絵本やおもちゃは存在する。
子ども向きだからこそ最高のものを
絵本でも,おもちゃでもそうだが,❝子ども向き❞という部分を,「たかが…どうせ…」と考えるか,
「子ども向きだからこそ最高のものを…」と考えるかの,その落差はあまりにも大きい。
引用:『好きッ!絵本とおもちゃの日々』 相沢康夫 著 おもちゃの寿命
相沢さんの根幹にある思いはきっと見出しのとおりだろう。【子ども向き】だからこそだましてはいけない。最高のものでなければならない。おもちゃであろうと絵本であろうと。
実は,宮崎駿さん,中川李枝子さん,相沢康夫さんの3人に共通する考え方がこれだ。【子ども向き】だからこそ,バカにしてはいけない。子どもが相手だからこそ,本気で全力で良いものを。
宮崎駿さんは,児童文学やアニメーションを。
中川李枝子さんは,絵本や児童文学を。
相沢康夫さんは,おもちゃや絵本や児童文学を。
子どもが自分を形作るのは,やはり好きなものからだろう。
絵本だったり,おもちゃだったり,アニメだったり,漫画だったり。そこから多大な影響を受け,自分という人格を形成する。
そう考えると,やはり,【子供向け】はバカにしてはいけない。関わる親や先生などの大人たちの影響ももちろん多いが,内的な影響は,【好きなモノ】のほうが大きいような気もする。
そんなことを学ばせてくれたこの三者には感謝しかない。
育休中に彼らの本,考え方,生き方に,本当に出逢えてよかった。
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