【児童文学】『イワンのばか』に学ぶ最良の❝ばかな生き方❞/トルストイ作

育休中に読んだ本
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【児童文学】とは,子どものために語られる物語である。【子ども向け】ときくと,幼稚だとか,単純だとか,簡単で分かりやすい,知識がなくても理解できるといったような印象を受ける人もいると思う。

ただそうではない!

絵本でも,おもちゃでもそうだが,❝子ども向き❞という部分を,「たかが…どうせ…」と考えるか,

「子ども向きだからこそ最高のものを…」と考えるかの,その落差はあまりにも大きい。

引用:『好きッ!絵本とおもちゃの日々』 相沢康夫 著 おもちゃの寿命

そう,【子ども向け】だからこそ,だませない,ごまかせない,正直でなければならない。そんな思いで,最高のものをつくってきた先人たちがいる。

【子ども】とは,無限の可能性を秘めている存在。そんな存在に向けたものだから,【子ども向け】とは,【無限の可能性を秘めた者向け】と言い換えることもできるのではないだろうか!

育休パパ
育休パパ

というわけで,児童文学にはまって,読んでいっている最中なのであります!

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どのように生きればいいのかのヒントをくれる作品

アニメ界の巨匠,宮崎駿監督は『本へのとびらー岩波文庫を語る』で紹介している。

人はどのように生きるべきなのでしょう。子供のころ、この本を読んでぼくはとても心をうたれました。ばかのイワンのように生きられたらどんなにいいか。でも,それはとてもむずかしい。自分にはできそうにありません。そう思うのに,ぼくは今でもばかのイワンのように生きられたらと,時々思います。

『本へのとびらー岩波少年文庫を語る』 イワンのばか

この物語にでてくる【ばか】とは,どういうことをいっているのか。そんなことも考えながら紹介していきたい。


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『イワンのばか』の概要

‎ 『イワンのばか』

岩波書店; 新版 (2000/10/18)

原著は,1886年にロシアより刊行

レフ トルストイ 著 金子幸彦 訳

ロシアの文豪トルストイの民話の中から、「イワンのばか」「人は何で生きるか」「人には多くの土地がいるか」「ふたりの老人」などを選びました。つつましく生きる人々の悲哀を描きながら、人生の愛と真実について語りかける名作。(「BOOK」データベースより)

一般教養として,なんとなく「トルストイ」という名前は聞いたことがあった。

帝政ロシアの小説家,思想家

ドストエフスキーと並ぶ文豪

代表作『戦争と平和』

Wikipedia

そんな人が子ども向けの児童文学もかいていることが驚きだった。ロシアの民話に登場するイワンは,極めて純朴愚直な男ではあるが最後には幸運を手にすることが多いキャラクター。

そんなイワンはどういった生き方なのか。その生き方から現代を生きるヒントを得られないか。子育てにも生かせないか,そういった視点で紹介したい。

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ただ目の前のことを

イワンは,理不尽なことを言われたり,要求されたりすると,いつもある一言を言う。

「お前には,財産は分けなくていいよな。」と兄弟に言われた時も,

「お前が育てた麦をくれよ。」と兄弟に頼まれた時も,

「お前が育てた馬をくれよ。」と兄弟に言われた時も,

「うちの奥さんがお前はにおいが嫌だから,あっちに行ってくれよ」と住むところがなくなって住まわせてあげた兄の夫婦に言われた時も,

イワンの答えはいつもこう。

ああ,いいとも。

『イワンのばか』

自分のやるべきことがイワンにはよくわかっている。目の前のこと。自分のことをただひたすらやるだけだ。

他人は関係ない。自分がどう在るか。それを考えているのか,考えていないのか。

他人のことを気にしすぎて,自分のことがおろそかになる。

お金や欲望に目がくらみ,本当に大切な目の前のことを忘れてしまう。

そういったことが世の中には多い。

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「ばか」とは。

 この『イワンのばか』の中には,何度も「ばか」という表現がでてくる。これをどう受け取るか。特に,子どもは,深い意味もなく,「バカ!」という言葉をよく使う。現代においては,大人も使う。

 ぼくが幼少の頃くらいの昔と違って,「ばか」という言葉を誉め言葉に使うようになっているということだ。肯定的な言葉として時折使う。あくまでも個人レベルの話で。公共の場で,誰かが誰かのことを「バカ」と言ってしまうと大問題にはなるが。

 何か好きなことに対して,オタク的な意味合いで,バカを使うことがある。たとえば,野球が好きすぎる人,野球に没頭している人などに対して「野球バカ」という表現を使う。鉄道オタクとイコールになるかは分からないが,「鉄道バカ」なんていう表現もあるが,否定的な意味合いも多少含んでいるのかもしれないが,あくまでも「自分にはそんなに鉄道に熱中できないわ」というあきれた感じ程度のものだと思う。

 となると,イワンはどんなばかなのだろう。翻訳によっては,漢字で「イワンの馬鹿」としている出版社もあるし,「イワンのバカ」と表記しているものもあるが,違いを明確にするため,イワンについてはひらがなで「ばか」とかくことにする。

イワンは,いうなれば,「自分ばか」なのだろう。自分にしか興味がないという意味ではなくて,自分んおやるべきことが分かっている。自分に必要かどうか,おそらく考えずに判断している。「馬鹿正直」という言葉や「愚直」「純朴愚直」という言葉がぴったり。漢字の通り,「愚直」という言葉には,「愚か」という漢字が含まれる。一見,愚かに見える。

「愚直」とは,まっすぐ。実直。正直。一途。という意味で書かれている。

〘名〙 (形動) 知恵がなく正直一途(いちず)で、臨機応変の才がないこと。また、正直すぎて気がきかないさま。ばか正直。

コトバンク

上記のコトバンクに関しては,イワンのことを書いているようにしか思えない書きぶりである。

ただ,イワンはどちらかというと,知恵はあるけど,知識はないという感じ。臨機応変の才もないことはないのではないか。

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イワンのばかさ

イワンのばかさは,やはり,実直で自分が何者か知っているというところではないか。自分が何をすべきかがよくわかっているからこそ,悪魔に打ち勝つ。しかも,何度も悪魔のささやきにも騙されているにも関わらず,その実直な生き方,愚直な生き方で,無意識に悪魔をやっつけるのだ。

よく自分を信じるとか,自分らしさ,といった表現をすることがあるが,そういうレベルじゃない。自分が何者であるのか,自分にできることをひたすらやっていくのみ。

これがどんなに難しいことか。ぼくたちは知らない。だって,自分が何者であるのか,自分にできることを実直にやってきた経験が乏しいから。

というわけで,イワンのような生き方はできないのだ。しかも,だからこそ,イワンのような生き方ができたらと思うのだ。

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人を信じられるのは,自分を信じているから

イワンは,自分だけではなく,すぐに人を信じる。人の言っていることも信じる。悪魔の言っていることも疑いもせず信じてしまう。

それでも,「騙されない」!!

騙されているのに,騙されない。相手がどうであれ,自分のできることをやり続けていると,最後には勝ってしまう。

人を信じられる人って,自分を信じているからなんだなと痛感する。

自分を信じられない人,つまり自信がない人は,誰も信じることもできないし,他人からも信じてもらえない。

自分を信じられない人間を誰が信じてくれようか。

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イワンはイワン

よく,卑怯なことをされたら,卑怯なことをやり返しても良しとされるが,そうではない。

というか,卑怯なことをされたことにも気付いていない。

卑怯なことをされたり,そそのかされたりしても,イワンはイワンだから,無意識のうちに打ち勝ってしまう。

やはり,他人は関係ない。悪い意味で,他人に影響されない。どんな状況になったとしても,自分が自分であるイワン。

育休パパ
育休パパ

かっこよすぎる!!!!

他人を騙そうとしない人は,他人にも騙されない世の中であってほしい。

現実は反対のような気がする。他人を騙すような人こそ,騙し方を知っているがゆえに,避けられるような…。

ただ,どっちの自分で在りたいか,自分の子にどんな人になってほしいか。

難しいけれど,イワンのような「ばかな生き方」をしてもらいたいし,自分も少しでも近づきたい。

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