子どもが生まれ,育児をする中で人と関わるのが億劫な時がある。ただでさえ大変な育児。家事が後回しになってしまう日々。
時間があるなら,もっと家のことに使いたい。休みたい。1人でゆっくりさせてほしい。そう思うこともある。
ただ,育児中こそ,多くの人と会い,関わったほうが良い理由がある。親としてのメリットと子どものために良いことをまとめて紹介したい。
児童精神科医として多くの幼稚園や保育園にも関わってこられた佐々木正美さんの書籍『子どもへのまなざし』から引用させていただきながら紹介する。
親にとってのメリット
人間関係が多い=育児不安が減る
育児にかんして悩みとか不安があるときに,どのようなやり方でそれを解決するかとういことですが,育児書とか育児雑誌によって解決をはかるお母さんは,育児にたいしてマイナスの感情が大きいですね。
『子どもへのまなざし』佐々木正美 著
育児に対してマイナスの感情をもつ母親の多くは,育児で困ったときに本やインターネットで解決方法や対処法を調べるようだ。
それに対して,育児に悩みがあっても,育児にマイナスの感情をもたない人の多くは,困ったときに人と会ったり相談したりするようだ。
人と多く関わったり相談している人のほうが育児に対して深刻な不安感をもちにくいといえる。
紙面の情報やデータとわが子の発達を比べて,不安につながるということも多い。直接,人と関わりながら子どもの話をしていると,一見発達が早そうに見える子にも苦手なことがあるかもしれない。そういったことを同じ育児中の人と話すと見え方が変わってくることもある。どのように育っていったかということも,共有できる。
夫との会話と育児不安の関係
子どもの父親が,育児を協力してくれていると母親が感じている場合には,お母さんは疲労を感じにくい,いらだちも感じにくいということがはっきりわかります。
『子どもへのまなざし』 佐々木正美 著
夫との関係もいってみれば人間関係のひとつだ。最もたいせつともいえるし,最も気を遣わなくてもいいともいえる。親しき中にも礼儀はあるべきだが。
夫とたくさんコミュニケーションをとっているほうが,疲労を感じにくいし,いらだちにくいし,不安も感じにくいようだ。
これについては,全国のお母さんたちはどう感じるだろう。夫婦の在り方は夫婦の数だけあると思うので何とも言えないが,会話がほとんどないことが居心地が良いと感じる人もいるのだろうか。
会話をするということは,関わるということ。関わるということは,けんかが起きてしまうこともあるだろう。けんかをしてもなお会話をしているということは,その夫婦ならではの解決法のもと仲直りもしているのだろう。
そういった親同士の関わり合いも子どもはしっかり見ているはずだ。全く関わらない親を見ている子どもは,人と関わることを避ける大人になるかもしれない。
けんかばかりしていても,ちゃんと自分の言いたいことを言い合い仲直りをしている親の子は,その親を基準に人と関わろうとするかもしれない。
いずれにしても,子は親を見ている。
全く関わらない姿を見せるよりは,たくさん関わって協力したり,けんかしたり,仲直りしたりする姿を見せるほうがきっとプラスになるだろう。
子どもにとってのメリット
育ち合う子ども
子どもというのは,自分の子どもだけが育つということはありえなくて,人と,とくにほかの子どもと育ち合うのです。
『子どもへのまなざし』 佐々木正美 著
大人からしか学んでいない子どもは,社会性が身につかない。子どもは子どもなりの,子どもの社会の中で学ぶべきことがある。それらを学ばないと,子どもの世界にいられなくなる。
佐々木さんは,著書の中で,社会性の不足した子どもたちは心身症をうったえたり,不登校や緘黙,家庭内暴力などの非社会的な行動にでることが多いという。
たしかに,子どもの世界というのは,お互いの主張がぶつかり合い,発達段階的にも他人の要求や要望を聞き入れられないことが多い。
大人からすると,どうでもいいと思えるようなことも,子どもにとってはそれがすべてで,どうしても我慢できず譲れないがために,泣き出したり叫んだりすることもある。
そういった厳しい社会の中で子どもたちなりに生き抜かなければ,子どもの世界でしか身につかないものを身につけずに育ってしまうことにもなる。
親からすると,他人の子どもを傷つけてはいけない,自分の子はすぐ癇癪を起すといった理由で,他の子と遊ばせることを拒むこともある。
実際,ぼくもよその子とトラブルになったら面倒だなと思って,関わらせたくないと思ってしまうこともある。
それは奪うだけだ。生きていく力を。
ということに気がついた。
他の家族とのおでかけ
他の家族とのおでかけも面倒だなと思って避けることがある。ぼくの奥さんはわりと率先して,他の家族とも関わろうとする。
けんかになったら嫌だな,傷つけたら面倒だな,なんて思ってしまい,極力関わらせないようにしてしまうこともある。
遊園地だって,本当は親しい何家族かでいったほうが,子どものためにはいいのです。何家族かでいったほうが,それだけ社会の中にいることになるのです。
(中略)
子どもは子どもたち同士でも,こんどはあそこへ行こう,あっちへいこうと,自分たちに判断で行動できるようになるのです。(中略)自分たちの家族だけだと,みんな親にコントロールされた動きしかしないのです。自分の判断で行動しないのです。
『子どもへのまなざし』 佐々木正美 著
この文章を読んでいると,自然と思い起こされた。たしかに,うちの子も自分の家族だけで公園にいくよりも,いとこたちと公園にいったときのほうが,ワクワク・ウキウキといった感じで,親そっちのけであっちにいったり,こっちにいったりしている。
自分の家族だけでいくと,パパきてーと言われるのでついていく。ついていくとあれこれ声をかけ危険をさけるような行動をさせてしまう。
親のコントロールのもとの行動でしかなくなる。
子ども同士の関わり合いの中,まさに育ち合っている瞬間なのだと思えた。
まとめ~人を頼ること
頼むということは,相手から頼まれる用意がありますよということ。
『子どもへのまなざし』佐々木正美 著
親子関係も人間関係のひとつ。もちろん夫婦関係も。
大人が人間関係の中から嫌なこと,つらいこと,うれしいことなど様々なことがありながら学べることがあるように,子どもも子どもの世界の中でしか学べないことがある。
大人が教えられることなんて本当に微々たるものなのかもしれない。
親戚や友人の家族同士で,遠出をしたりおでかけをしたりすることも,ある程度信頼していないとできないことである。
この場合の信頼というのは,相手の家族はもちろんのこと,自分の家族も。これが今の世の中で多くの大人たちができなくなっていることの1つのような気もする。
子どもは育ち合うもの。
育ち合わせるためには,よその子にも感謝しなければならない。自分の子を育ててくれているのだから。
そういった意識をみんながもてば,人間同士のつながりはもっともっと豊かになっていくのだろう。
子どもの心も豊かになっていく。親である自分もそうでありたい。
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