この本の本筋からそれてしまうかもしれないが,ぼくは現在育休中なので,子育てに関わるところを引用しながら,自分なりの考えや意見を述べたい。
橘玲さんの前著『言ってはいけないー残酷すぎる真実』で❝子どもの成長に子育ては関係ない❞と衝撃的なことが書かれていたが,今回もなかなか言いたい放題である。
橘玲さんの,行動遺伝学や心理学の学者の研究データや実証実験などに基づいた考察は興味深く読めるはずだ。
ぼくなりに読んで,勝手に感想をかくので,本を読んだ内容の解釈が間違っているかもしれないことは了承していただきたい。
その意味でも,ぜひ実際に読んでみることをおすすめする。
育児や子育てにつながる部分を紹介していきたい。
『もっと言ってはいけない』概要
前著『言ってはいけないー残酷すぎる真実』のほうが読み易かったように思う。それは,ぼく自身の読書習慣があまりなかったというのもある。論文などの研究に基づいた文章を読みなれていないのもある。
前著『言ってはいけないー残酷すぎる真実』と後著『バカと無知ー人間この不都合な生き物』について書いた記事は以下。
親の影響力
私(人格)は遺伝と環境によってつくられ,環境は共有環境と非共有環境によって分けられる。これらをまとめると,
私(人格)=遺伝+環境(共有環境-非共有環境)
『もっと言ってはいけない』 橘 玲 著
共有環境とは家庭環境のことで,非共有環境というのは友人関係や学校など家庭以外の環境のこという。子育てに関わるのは,非共有環境のほうが大きいとは前著での説明もあったとおりだ。
❝親の子育ては子どもの成長に関係ない❞といった内容のことが書かれていた。
それに加えて,本著では以下のことも書かれている。
共有環境の影響力が幼児期・児童期に最大で,そこから減少していく一方なら,子育てが報われるのは子どもが小さいときだけだ。
『もっと言ってはいけない』 橘 玲 著
これは認知能力に及ぼす遺伝の影響についてかかれたものだが,たしかに子どもが成長すれば親のいうことを聞かなくなるので,小さいうちしか子どもに影響できないということは納得である。
小さいうちは影響できる?
逆にいうと,子どもが小さいうちは親は影響できるということか。
この解釈は正しくないのかもしれない。子どもの人格は,親の遺伝によって決まってしまうのだから。
❝顔や身長,運動能力は遺伝の影響が強い❞のであれば,❝心や性格,知能までもが遺伝による影響が大きい❞とは納得のいく考えだ。
遺伝ってことは,自分と奥さんみたいになるってことだよね?(バカ丸出し)
そう考えると,自分も親からの教育よりも遺伝によって人格がつくられたともいえる。自分の良いところ,嫌なところを分析して,影響の強い幼児期にできるだけ,ぼくみたいな人間になっても困らないような教育をしよう!というのは間違いなのだろうか。
きっとまちがいなのだろう。でも,できることはしたいよね。と思うのが親かな。
小学校までに!!
認知能力の発達について膨大な文献を渉猟したヘックマン(アメリカの経済学者)は,誕生から5歳までの教育投資の重要性を説き,「認知的スキルは11歳ごろまでに基盤が固まる」と述べる。
『もっと言ってはいけない』 橘 玲 著
子どもが入学する6歳からでは遅いということだ。
やはり,5歳までは親の子育てが影響できるのなら,あれやこれややりたいと思わせてくれる。
ちなみに,本文で著者は,ヘックマンによる実験の対象は,貧困家庭の子どもたちだったため,「幼児教育全面無償化」を否定している。教育無償化で富裕層にも税金をばらまくのではなく,その予算を社会的弱者に振り向けるべきとしている。
また,無償化をしたり,予算を充ててお金を配るだけでは効果がないといった事例も書かれている。もちろん,教育にはお金がかかるし,お金をかけるべきだが,何にどうつかうかは慎重に考慮する必要がある。
育てるべきは言語的知能?
言語的知能が低いと(いわゆる口べただと),世界を脅威として感じるようになる。なんらかのトラブルに巻き込まれたときに,自分の行動を相手にうまく説明できないからだ。
『もっと言ってはいけない』 橘 玲 著
これについて,例として子どもが大人に怒られたときのことがかかれている。悪ふざけをしたときに,大人からの問いに即座に応えられる子どもは許されて,口ごもる子どもは罰せられると。
ぼく自身も,今もそうだが口下手なのでよくわかる。思っていることをうまく言葉にできない。言葉にできないから伝わらない。伝えたいように伝わってくれない。だから,余計に話したくなくなる。
言語的知能の高い子どもは見知らぬ他人との出会いを恐れなくなり(怒られても言い返せるから),口下手な子どもは親族や友人の狭い交友関係から出ようとしなくなるだろう(自分の行動を説明する必要がないから)。
『もっと言ってはいけない』 橘 玲 著
だから,口下手な自分は,いつも現在いる場所に安心感を覚え,新しい人間関係をつくるのが苦手だったんだと自覚した。
今は,どうやってやればいいのか分からないが,わが子には言語知能を高めてもらい,どんな場でも物怖じしない子になって,どんどん新しい世界に挑戦してもらいたい,と思うのは安易すぎるか。
本書では,言語的知能が高いとリベラルになり,低いと保守になることが様々なデータや実験から示されている。
人格の「ビッグ・ファイブ」
認知スキルも性格スキルも幼年期がもっとも重要なようだが,性格スキルは10代以降も伸ばせるらしい。
遺伝率も認知スキルは約80%で,性格スキルが約50%なので,子育てや教育の影響も性格スキルのほうが大きい。
それにしても認知スキルが80%とは驚きだ。くわしいことは『もっと言ってはいけない』を実際に読んでみることをおすすめする。
心理学では人格の「ビッグ・ファイブ」を,開放性,真面目さ,外向性,協調性,精神的安定性としているが,これらの仕事と成果の関係を見てみると,すべての仕事においてもっとも影響が大きいのは真面目さで,次いで外向性,精神的安定性となっている。
『もっと言ってはいけない』 橘 玲 著
上記のような人格,性格は知能よりは教育によって伸ばせるのだから,親としてできることはありそうだ。
こういったものを見た時,いつもおもうが,親が勉強し続けないといけないなと思う。子どもの時はほとんど勉強もしなかったし,勉強が何の役に立つのか考えたこともなかった。
自分のような子どもになってほしくないと思うばかりである。
親が成長せねば
右か左かにかかわらず,ひとびとは読みたいものだけをネットで探し,自分たちを「善」,気に入らない相手に「悪」のレッテルを貼って,善悪二元論の物語を声高に語る。
『もっと言ってはいけない』 橘 玲 著
本当に,今の世の中は情報が溢れすぎている。よくYouTubeをみていても,その動画を見ながら,「この動画を見ている人はどんなことを考えているのだろう」とコメント欄を見てしまう。
自分の意見をもてなくなってきている。人の意見をみて,しっくりくるものを自分の意見にする行動をとってしまっている。
自分の意見を探している自分がいる。自分の意見をもたなくては。自分の意見をもたない子どもにしてしまうかもしれない。
親が人として成長していく意識をもつことが大事だと思った。
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