自分が発した言葉のすべてを一言一句覚えている人間はいない。覚えているはずもない。ただ,毎日わが子と関わる中で,悩んだり反省したりすることは多々ある。
なんであんなこと言ってしまったんだろう…。
もっとやさしく言えばよかった…。
まだ子どもに対する失言を覚えていて後悔しているだけましなのだろうか。
自覚しなくなったらいよいよまずい。
今回は,【言葉】を視点にした子育てについて書かれた本を紹介する。
『その「一言」が子どもの脳をダメにする』概要
以前紹介した『発達障害と間違われる子どもたち』の著者でもある成田さんとその成田さんが運営するスタッフの上岡さんという方の共著となっている。
成田さんは一貫して,【睡眠の重要性】【毎日の生活習慣】が【子どもの正しい脳育て】につながると訴えている。
今回は【正しい脳育て】をするためにどんな言葉がけが良いかを視点に書かれている。良い言葉がけと良くない言葉がけを具体的な場面とともに示してくれている。
実践するのは難しいところもあるが,まずは自分の発する言葉を意識するくらいが第一歩といえそうだ。
このブログでは,育休中のぼくが育休中に読んでよかったと思える本を紹介している。要約や解説というよりはぼくの感想であるし,この記事を読んだ人が本を買って読みたい!と思えるようになればと思う。
自分の中で響いた文章や書き残しておきたい言葉などを引用しながら,いかに読むべき本かということを伝えられたらと思う。
子どもの脳育て
『「発達障害」と間違われる子どもたち』でも書かれていたが,脳は①「からだの脳」,②「おりこうさんの脳」,③「こころの脳」の順で育つ。この順番が崩れると「発達障害もどき」となる。
「発達障害もどき」とは,発達障害の診断がつかないのに,発達障害と見分けのつかない症候を示している状態。
『「発達障害」と間違われる子どもたち』第1章「発達障害」と間違われる人が増えている。
今回紹介している本書でも,脳育ての順序の重要性を説いている。脳育ては赤ちゃんの頃からはじまっており,何歳からでも育て直せるとのこと。そこで「言葉がけ」がとても大切だということ。
親から子どもにかける「言葉」が重要なのは,「何度も繰り返し入ってきている刺激を重要なものだと判断する」という点です。親からもし「お前はなんてダメな人間なんだ」という言葉ばかり投げかけられていたら,「ダメな人間だ」という神経回路が強化されてしまうからです。
『その「一言」が子どもの脳をダメにする』 成田奈緒子 序章
どのようにダメにするのか
この本の読み易いポイントとして各章で,何がどう脳にとってよくないのか,子どもをどうダメにするのかが書かれているポイントだ。
それぞれの章で,どんな場面でどんな言葉がけがよいのか明示されているので,実際に読みながら,自分の日々の発言を反省する人は多いと思う。
以下,この本を読みながら反省したことやいつも自分の心に留めておきたいことなどを引用しながら感想としてかいていく。
「ほめる」のではなく「認める」言葉を
どんな大人も親も先生も,子どもは褒めてほしいと勝手に思っている。もちろん,間違いはないのだが,「ほめればいい」というものではない。どう褒めるかも重要だなと思いながら読んでいたが,どうも「ほめる」こと自体が,子どもに対する大きなプレッシャーとなる場合があるとのことだ。
「100点を取って偉いね!」といった言葉が言い換えれば「100点でないとダメ」ということになりかねないからだそうだ。そこで,同じ場面でも「成長したね!」などの言葉で「認める」ことが重要だという。
ぼく自身は,何でもかんでもよかれと思ってほめすぎだなと思った。条件付きの褒め方ともいうべきか,○○したから良い子というのは○○しないからダメな子となって子どもに自信を失わせかねない。
「親に信頼されている」という安心感が子どもの脳をよりよく育てます。信頼されることで,なぜ勉強をしなければならないのか,だんだんと自分で判断できるようになっていきます。
『その「一言」が子どもの脳をダメにする』 成田奈緒子
「信頼」ってすごく難しい。親はいつまでも子どもができないからしてあげないとと思ってしまう。できるようになったなと思うと必要以上に「前はできていたのに!」「できるのになんでやらないの!」なんて言ってしまう。
その他,この【第1章】では,「ちゃんとやりなさい!」などの「あいまい言葉」が脳育てを阻害すること,それに対してどんな言葉がけがよいかなど指南してくれている。気になった方はぜひ読んでご自身の子育てに活かしてほしい。
子どもにもアウトプットを
大人に比べて,子どもの脳は経験のストックが少ないので,想像力に乏しく,まだ起こっていないことをイメージするのが苦手です。
『その「一言」が子どもの脳をダメにする』 成田奈緒子
また,子どもに限らず人間の脳は,何かをしている最中に他のことをインプットすることは苦手であるということ。伝えるときは,しっかりと話し手に集中させてから,「5W1H」を用いて話したり,具体的な場面を想像させたりして,分かるように伝えることが重要とのことだ。
親がこうした話し方を繰り返すことで,子ども自身がアウトプットするとき(話したり書いたりするとき),しっかりとした説明ができるようになるということらしい。それができていれば脳はしっかり育っているともいえる。
例えば,ぼくもよくやってしまうが,「100点取ったらご褒美に○○を買ってあげる」などテストの点などできたことを交換条件に買ってあげるのではなく,「ほしいものがなぜほしいのか」をプレゼンさせることも脳育てには良いということだ。
どうせくだらないゲームをほしがって…とか,要らないものなのに…とか思うのではなく,子どもが何かを欲しがったら脳育てのチャンス!と思って,子どもに話させればいい。子ども自身が理由を考えているうちに【もしかしたらそんなにほしくないかも?】と思うこともあれば,【なぜほしいのか理由が明確】になり,買ってもらった際にはより大切に扱うことも期待できそうだ。
失敗の邪魔をするな!
「失敗」は脳育ての最大のチャンスです。子どもの先回りをして,「失敗しないように」フォローするのではなく,「失敗した後」にフォローするのが親の役目。
『その「一言」が子どもの脳をダメにする』 成田奈緒子
失敗することで,「次はこうしたらいいかも」と計画を立てて行動できるようになり,これこそが前頭葉をフル活用するのだという。
ここまでかいてみてすでにお気づきのように,とにかく「すべてのことを脳育てに活かそう!」ということだろう。本書では,「宿題しない」「片づけをしない」「忘れ物をする」などのいわゆる親が子どもに言いたくなる場面でも,すべてが脳育てのチャンスだと。子ども同士のトラブルも「学校に行きたくない!」といった時も脳育てのチャンス!
とにかく子どもの言ったことをおうむ返しにして感情を引き出したり,傾聴することで落ち着かせたり,親ができることをしっかりとやって,せっかくの経験の場を邪魔しないことこそが親のできることなんだと思った。
詳しくは本を読んで自分なりの子育てに活かしていただきたい。
子どもの嘘は親が原因?
子どもは,親に「怒られる」「悲しまれる」「否定される」などと思うから嘘をつくのです。これは,親によく思われていたい,嫌われたくないという不安な気持ちの表れです。
『その「一言」が子どもの脳をダメにする』 成田奈緒子
子どもが嘘をつくときって自分を守るとき?親に怒られたくないとき?つまり,親からよく思われたいとき。よく思われるための他の方法が分からないときこそ,嘘をついてしまうのかもしれない。たしかに,その意味では,親が子どもに嘘をつかせているともいえる。
ここでも成田さんのいう「脳育て」のチャンス!
さてどうするのがいい?やってしまいがちなのは,「うそついてるでしょ!」と指摘したり,罵ったりすることだ。ぼくもよくやってしまう。もちろん,これはNG!
成田さんはとりあえず泳がすことをすすめている。また同じ嘘をついたとき,怒鳴るでも罵るでもなく,軽く言うことで,子どもが「まさかバレている!?」と思うようになり嘘をつかなくなるということだ。なかなかできるものではない。泳がせることも,おどけて指摘することも,親の我慢する力も試されると同時に,子どもへの信頼も試されるような気がする。
その他,ゲームやスマホに関する言葉がけ,学校や習い事に関する言葉がけ,家では「手伝い」をさせるのではなく「役割」をもって家事をしてもらうことの大切さなどについて書かれている。ぜひ,実際にこの本『その「一言」が子どもの脳をダメにする』を読んでほしい。
最後に育休パパらしく,父親について書かれていたことの引用とその感想をかいてこの記事を終わりにする。
パパ必見!父親の言葉がけ
「大人の世界はもっと大変なんだから」といった親が言いがちな言葉は,父親に多いようだ。著者は,「大人の世界」の常識を押し付けてはならないといっている。
子どもが悩んでいることに対して,大したことじゃない!と思ってしまうこともあるが,子どもにとってはそうではない。その時に「どんなことが大変なの?」と不安を受け止めることが大切なのだそうだ。
「大人の世界は…」という言葉は使ってほしくはありませんが,その前置きさえなければ,父親が自分の仕事の大変さを語るのは,そんなに悪いことではないと思います。むしろ,「会社でこんなことがあってね」と仕事上の悩みを子どもに話してみましょう。
(中略)
父親がどんな仕事をしていて,どんなふうに大変かを知ることは,大人社会を知ることです。知らない世界について知ることは,子どもの脳への刺激となり,脳を豊かに育ててくれます。
『その「一言」が子どもの脳をダメにする』 成田奈緒子
今では,家庭の在り様は千差万別なので,上記のことは父親に限ったことでもないと思う。母親も父親と同じくらい(もしくはそれ以上)仕事に時間も労力もかけている場合もある。
そんな親が,子どもの知らない世界を経験に基づいて語ることはとても大切なことだという。親が子どもに困っていることを相談することで,大人も大変なんだと知ることができるし,子どもからすると相談してくれてうれしいと信頼に結びつくかもしれない。
ただ,だからといって,大人の世界は大変なことだけではないとしっかり伝えることも大事だという。仕事で楽しいこと,がんばったこと,乗り越えたことなど親が子どもに夢や希望を語らなくてどうする。
子どもに夢や希望を語れる親で在りたい。同じくらい,子どもの話をよく聞きたい。そうでないと,話を聞いてもらえないから。
子どものとりとめもない支離滅裂な話をじっくり聞くのは苦手だし,「こういうことが言いたいの?」と話をさえぎってしまうこともあるけれど,それはやめなければ!
仕事を復帰すると,必然的に子どもにとっては母親との時間のほうが長くなる。関わる時間が母親に比べて半分になろうとも,関係性は半分であっていいはずがない。この本を読んで思ったこと。子どもの話をよく聞くこと。自分の発言に意識を向けること。
今まで無意識に反射的に発していた言葉の数々に,意識を向けることがまず第一歩。よいよい言葉がけができる父親になるための。
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