【これぞ王道の海洋冒険ものの原点にして到達点】『宝島』/スティーヴンスン作【子どもが教えてくれるたいせつなこと】

育休中に読んだ本
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【海洋冒険もの】と聞くと,思い浮かぶのは,海・宝物・地図・海賊・財宝・船・冒険…といった言葉ではないだろうか。勇敢・無謀・希望・裏切り・嫉妬・成長・困難・悲劇といった言葉も思い浮かべるかもしれない。

これらすべての要素が楽しめるのが,『宝島』である。あの宮崎駿が,すべての宝さがしものの物語はこの本をもとにしてつくられたというほどである。

少年の夢,ロマンすべてがつまっている。冒険もの,海洋もの,宝探しものの原点にして,到達点ともいっていいと思う。

少し古さを感じるところはあるかもしれないが,十分に楽しめるはずだ。

この本をもとに,どれほどたくさんの宝さがしの物語,映画,マンガ,ゲームが作られたことか。宝物のありとあらゆるものが考えられました。

沈没船の金貨の山,大判小判がぎっしりつまった瓶,握りこぶし位のダイヤモンドや宝石,黄金の王冠から魔法の珠や剣,その他…。宝のありかを示した地図も形を変えて今でもしょっちゅう使われています。

 どうして人は宝物が好きなのかということはさておき,この本は本当におもしろいのです。読んで損はないと思います。何しろおおもとの本なのですから。

『本へのとびら‐岩波少年文庫を語る』 宮崎駿 著

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『宝島』の概要

『宝島』

岩波書店 (2000/10/18) 原著は,1883年にイギリスより発行

作者:R.L.スティーヴンスン, Robert Louis Stevenson

訳者:海保 眞夫

ジム少年は,トレローニさんや医者のリヴィシー先生とともに,海賊フリント船長がうめた莫大な財宝を探しに出帆する.ぶきみな1本足の海賊シルヴァーの陰謀にまきこまれ,はげしい戦いが始まる….手に汗にぎる海洋冒険小説の名作

1883年!!?今から141年前の作品だというのか…。まずそこに驚いた。大日本帝国憲法が発布されるよりも前に書かれた(逆にイメージしにくい?)とは!!

そして,そのぼくらからしたら大昔に書かれたものが海洋冒険ものの物語の最高峰を担っているとは。王道の冒険ものといった感じ。

少年があることをきっかけに❝宝島❞を目指して海へ冒険に行くことになり,さまざまな大人たち(善人もいれば悪人もいる)と関わり合いながら,成長していく物語。

少し気弱な少年が多くの困難と対峙しながら成長していき,自らの判断で大人たちを出し抜き,大活躍をする。❝宝島❞を目指して大海原へ冒険に。こんなのワクワクしないはずはない。童心をくすぐられないはずがない。当時の子どもからすると,今でいう『ワンピース』を読んでいた気分だっただろう。


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『宝島』の魅力

魅力のひとつはいつの時代にも共通する未知への挑戦だろう。

ジム少年という家庭しか知らない存在が,老海賊から宝の地図を手に入れ,勇敢な大人や強欲な海賊たちと海へ出て,宝島を目指す。

「宝の地図」「老海賊」「海賊の財宝」「宝島」…。このワードだけで妄想を膨らませることができる。実際に当時のイギリスは帝国主義時代でもあり,海外進出や植民地支配に乗り出していた頃らしい。

本当にまだ見つかっていない海賊の宝がある島がそころじゅうにあるかもしれないという期待や夢,空想が現実味を帯びていたともいえるだろう。

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老海賊の存在

老海賊との関わりが物語のトリガーの役割を担っている。老海賊という異質な存在がものの見方や世界観を広げてくれたといってもいい。その前提のもと,海賊から家を襲われた時も逃げる時も立ち向かう時も堂々としていられたのではないか。

老海賊が現れたことが少年の人生を大きく変えた。「得たいの知れない存在」と出逢うことで子どもは大きく成長するものだから。

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母親の存在

臆病は伝染すると言われている。同時にまた,議論が人間を大胆にするのも事実である。みんながそれぞれ自分のいいたいことをいってしまうと,母はかれらにむかって演説した。自分としては,父を亡くしたばかりのわが子のものである金を失いたくない。

「あなたがたがだれひとりとして協力してくれなくても,ジムとわたしは恐れません。(中略)図体ばかり大きくて肝っ玉の小さなあなたがたの助けなど,こちらからごめんこうむしますわ。(略)」

『宝島』スティーブンスン作

この母親あってこそのジム少年。母は子を守るため,子は母を守るため,行動に出た。

その後,宝島を目指す旅に出ると決めた時も,実際に別れの時も母親との関係は深くは描かれない。ただ,少年と母親の関係は信頼で結ばれており,どちらも自律できているからこそだと感じる。親子の絆という視点で見ても,おもしろいと思う。

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子どもの性質を活かす

盗み聞き

子どもは大人の秘密を盗み聞きしてしまうことがよくある。

親の会話を何気なく聞く中であまり聞いてはいけなかったなと思うことは誰しもが経験するところだろう。

一本足の男シルヴァーの会話を盗み聞きしていなかったら,どうなっていたのか。おそろく,シルヴァーにすべてを奪われ殺されていただろう。

告げ口

子どもはよく告げ口をする。

世間一般的な子どもは告げ口をよくする。チクるというやつ。「○○くんが△△くんの悪口を言っていたよ」「◇◇くんがこんな悪いことをしていたよ」など。

自分なりに善悪を判断して正義の行動をとるのだ。

今回は,すぐに船長や郷士さん,先生にチクった。もちろん,彼なりに善悪を判断した上でだ。その後のことの想像しての行動だった。

この行動がなければ全滅していただろう。

大人の言うことは聞かない

子どもは大人の言うことはきかない。

「こうしなさい」と言われば,したくなくなる。行動を強制されると反発したくなるのが人間だからだ。特に子どもは顕著だろう。

ジム少年が勝手に行動したことが2回あった。その2回の身勝手な行動がなければこれまた全滅していただろう。

だれも見ていないときにこっそり立ちさるのである。これは明らかに間違ったやり方であり,計画そのものまで間違ったものとなってしまう。だが,わたしはほんの子どもにすぎず,すでに決心していたのだ。

『宝島』 スティーヴンスン作

子どもは子どもなりの考えで行動している大人は大人の基準や判断で子どもの行動を強制したり制限したりする。

子どもなりの理由があっても,大人はそれを知ることができない。子どもは思いや考えを言語化できないからだ。到底,大人のような固い頭では理解できない。

「やりたい!」と思ったことは,やらなければ気が済まないのだ。

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まとめ

最高の王道の冒険もの。海洋冒険ものとして原点であり,最高峰の作品である。

140年も前の作品だが,物語の素晴らしさも,人間の本質も子どもの本来の魅力も,いつの時代も変わらないのだと思わせてくれる。

子どもにとって,大人は知らないことを教えてくれる存在であると同時に,可能性を狭める存在でもある。

大人にとって,子ども知っていることを再認識させてくれる存在であると同時に,可能性を広げてくれる存在でもある。

そのことを教えてくれた『宝島』

ぜひご一読を。

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