『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』はどう育児と結びつくのか【読書感想】

育休中に読んだ本
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育休に入り,奥さんと協力し合いながら,夫婦の時間を確保したり,お互いの「ひとり時間」を確保する中で,最近読書にはまっている。

仕事をしていると,なかなかゆっくりと継続的に読書をする時間がないが,最近はがっつり時間を確保することができている。

その読んだ本の中で,勝手に自らの育児と結びつけながら,感想を書いていく。

今回の書籍は,『言語の本質 ことばはどう生まれ,進化したか』

書店やネット販売でも,上位にあり著名人も絶賛のコメント寄せているところから手に取った方も多いのではないだろうか。

このブログは,あくまでも読書感想で,誤った解釈をしている可能性があります。本を読んで今の自分が感じたこと,考えたことを書くに過ぎないので,本書の解説文でもなければ,要約でもありませんのご注意を

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『言語の本質』の概要

『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』

中央公論新社 (2023/5/24)

著者:今井むつみ 秋田喜美

著者は,慶応義塾大学の教授で,認知科学や言語心理学を専門とする今井むつみさんと名古屋大学の准教授で,認知・心理言語学を専門とする秋田喜美さんの共著である。

出版社の内容情報は以下である。

日常生活の必需品であり、知性や芸術の源である言語。なぜヒトはことばを持つのか? 子どもはいかにしてことばを覚えるのか? 巨大システムの言語の起源とは? ヒトとAIや動物の違いは? 言語の本質を問うことは、人間とは何かを考えることである。鍵は、オノマトペと、アブダクション(仮説形成)推論という人間特有の学ぶ力だ。認知科学者と言語学者が力を合わせ、言語の誕生と進化の謎を紐解き、ヒトの根源に迫る。

3歳の娘は,年齢にしてはたくさん話すようになり,最近1歳になった息子は,少しずつ言葉が出てきたため,この書籍の言語習得の過程は興味深く読むことができた。

アマゾンのレビューにも5歳くらいまでのお子さんがいる親御さんにぜひ読んでほしいといったコメントも見られた。

正直,自分にとっては,少し難しく感じた。学術的な論文のような書き方に慣れている人は読み易いと思う。

本ブログでは,子育て真っただ中な自分の立場を踏まえて,印象に残った「言葉(文章)」を引用し,それについて,考えたこと,感じたこと,今の自分に当てはまることなどを書いていく。


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子どもはどうやって「ことば」を獲得していくのか

「ことばとは何か」「子どもはどういったことばを最初に覚えるのか」などの問いを出発点として,さまざまな問いによって展開されていく。いつからか自分が気付かないうちに,当たり前のように「ことば」を話している。もちろん,知らない言葉に出逢うこともあるし,なんとなく知っているだけで本当に意味を知らない言葉でも「たぶんこうかな」と使っている言葉もある。間違えて使ってしまうこともあるし,言い間違えることもある。誰かに指摘されたり,他人が自分とは違う言葉の使い方をしている場面に出くわしたりして,その意味を自然と学び身につけていく。

改めて,こういった発話や言語習得について深く考えたこともないし,考えようとしたこともない。本書を通じて,子どもがどういった言葉をどのように使い始め,そういったときの親としての在り方などを学べるものではないかと思った。

ことばの意味を本当に理解するためには,まるごとの対象について身体的な経験をもたなければならない。

『言語の本質 ことばはどう生まれ,どう進化したか』 今井むつみ 秋田喜美 共著 はじめに

本書は,基本的に【記号接地問題】への挑戦とも受け取られる切り口で論が進められていく。

おおまかにいうと,以下の3段階に分けられる。

  1. 言語と身体の関わり
  2. 言語の起源と進化
  3. 子どもの言語の習得
  4. 言語の本質とは何か

育休中の自分としては3までが長かった。ただ,何事も勉強。知っていくことの楽しさを味わえている。分からないことは調べながら,多少間違っていたとしても,きっとプラスになるだろうと!

というわけで調べたのが,【記号接地問題】という言葉。

意味を理解しない記号を別の、やはり意味を理解しない記号で置き換えているだけで、どこまで行っても、結局、人間が言語で伝えようとする本当の「意味と意図」は理解できない、というのが「記号接地問題」です。

日経ビジネス電子版 算数が苦手な子どもはAIと似ている 「記号接地問題」とは? 今井むつみ

身体的な経験をもってはじめて理解するというのは,人生を通して,なんとなく身をもって感じてきた。言語習得に関しても同じことがいえるのか。「本当に理解する」とは,何か。

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相手に伝わるように言葉を選ぶ手段「オノマトペ」

親はその場にあるものよりも,ないものを表す際にオノマトペやジェスチャーを多く用いた。

『言語の本質 ことばはどう生まれ,どう進化したか』 今井むつみ 秋田喜美 共著 第3章オノマトペは言語か

第1~3章までで,「オノマトペ」について,定義づけ,特徴,言語であるか否かなどのことが,実験や実証データを用いて語られる。言語学に興味のある人や言語習得を勉強している人にとっては,おもしろい内容だと思う。

子育ての視点で読み進めていくと,「言葉が何も分からない0歳児に伝えたいとき,どのような手段や方法を用いているか」という問いが浮かんできた。引用した言葉の通り,心のどこかで「こんな言葉言っても分からないだろうな」と思いつつ,言葉と表情と動き等,全身をつかって表現する。それでもあまり伝わる実感はないけれど,赤ちゃんなりに何かを受け取っているようではある。

親も親で,子どもが何かしら反応してくれたら,それで分かることもある。いわゆるオノマトペは,「シュー!」とか「ぱくぱく」とかそういった擬音みたいなもので,この言い方のほうが,伝わるだろうと思って,親は使っている。本当に伝わるかは怪しいけど。

本書に書かれていることで驚きだったのは,日本は外国に比べてかなりオノマトペを使っているらしいことであった。ここまでくると暴論かもしれないが,オノマトペを使うのは,いわゆる言語だけで伝わらない相手(赤ちゃんなど)に対して使うか,もしくは,より正確に,相手にイメージしてもらいやすいように使う(「車が目の前を走った」よりも「車が目の前をビューンと走った」というほうが速さや勢い,目の前を通過するイメージが湧きやすい?)ということ。

そのことから,どうにかして自分の思いや伝えたい内容を,正確に伝えるためにオノマトペを多用するに至ったのか。その姿勢は,子どもと接するときには大切なことだと思った。

子どもが小さければ,小さいほど大人はオノマトペを多用していることからも,正しく(というか効果的に)オノマトペを使いたいと思った。

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子どもはオノマトペが大好き

絵本の中でオノマトペは豊富に使われる。絵本を読んでもらいながら,子どもは軸となる要素につく小さい要素がいろいろあることに気づく。ことばは要素の組み合わせで構成されていることに気づき,大きな塊から小さい要素を抽出してその意味を考える。絵本で多用されるオノマトペから,単語の意味だけでなく,文法的な意味を考える練習もしているのである。

『言語の本質 ことばはどう生まれ,どう進化したか』 今井むつみ 秋田喜美 共著 

子どもは,オノマトペが好きというのは,子どもと関わる人であるならば,誰もが納得することだろう。なんというか,本当に「便利」である。特に,文字が読めない子どもにとっては,絵が情報のすべてであるが,読み聞かせることで,絵と言葉のイメージが結びつく,それをより楽しく,ダイナミックに理解し,心にシミをつくるのもオノマトペの役割のような気もする。

また,本書では,絵本に使われているオノマトペも年齢層によってちがいがあることが書かれており,今後,絵本を読み聞かせるときに,年齢に応じたオノマトペにも注目していきたいと思った。

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言語の世界の案内人「オノマトペ」

オノマトペは子どもを言語の世界に引きつける。それによって子どもはことばに興味を持ち,もっと聞きたい,話したい,ことばを使いたいと思う。それだけでとても大事な働きだが,オノマトペに親しむことで子どもは言語のさまざまな性質を学ぶことができるのである。

『言語の本質 ことばはどう生まれ,どう進化したか』 今井むつみ 秋田喜美 共著 第4章こどもの言語習得1ーオノマトペ篇

オノマトペを使うだけで,子どもは笑ってくれる。言ったオノマトペを復唱して楽しんでくれる。このことは,子育てをしている自分からすると何度も出くわした場面である。

まさか,それが,言語を学ぶことにつながっているとは。まさか,それが,言語を学ぶための土台となり,第一歩目をアシストしてくれるものだとは。

普段,何気なく使っているオノマトペの世界。知らない言葉をイメージしたり,その意味を理解したりするときに手助けしてくれる。その視点をもって,子どもと接したいと思った。

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言語習得への険しき道

言語を習得するには,エベレストに登頂するくらいの行程がある。その道のりを進むには,子どもたちはオノマトペから離れなければならない。

『言語の本質 ことばはどう生まれ,どう進化したか』 今井むつみ 秋田喜美 共著 第6章 子どもの言語習得2 アブダクション推論篇

オノマトペはあくまでも入り口に過ぎないことが書かれている。たしかに,いくらオノマトペをいえてもそれだけでは,話せない。オノマトペと言葉の意味のつながりを可能にするのは何なのか。

これは,あくまでも自分の経験なのだが,子育てをしている最中,一人で赤ちゃんと対峙していると,意外と無言であることが多い。おそらく表情も硬いままである。食事を食べさせるときも,「あーん」や「ぱくぱく」「もぐもぐ」「ごっくん」などのオノマトペを多用できる場面ではあるのだが,慣れてしまうと意外と,自分が発話していないことに気づく。

それに対して,3歳の子は下の1歳になったばかりの子に,よく語りかけている。自分なりのオノマトペも活用しながら,「その言葉を言っても伝わらないだろうな」と大人が思うことでもどんどん話しかけることで,第二子以降の子どもは言葉を話すことが増えるのかなとも思った。

感覚・知覚につながったオノマトペをやみくもにたくさん覚えても,やはり複雑な構造を持つ言語体系い到達できない。

『言語の本質 ことばはどう生まれ,どう進化したか』 今井むつみ 秋田喜美 共著 第6章 子どもの言語習得2 アブダクション推論篇

オノマトペで言語の世界の入り口に立つだけでは,その世界に入ったことにはならない。そこで,やはり,年齢に応じた絵本が役に立つのではないかと思った。

ぼくは,長く使えるからという理由や成長が遅れてほしくないという思いから,まだ1歳なのに2歳対象のおもちゃを与えたり,まだ2歳なのに3歳対象の絵本を与えたりしていたが,年齢や発達に応じたものを親である自分がしっかりと精選しなければならない。

絵本やおもちゃを選ぶことは,親の大きな責任のひとつではないかと思った。

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子どもの力を信じる

人間の子どもには,ものすごい学習能力がある。知覚経験から知識を創造し,作った知識を使ってさらに知識を急速に成長させていく学習力が人の子どもにはある。

『言語の本質 ことばはどう生まれ,どう進化したか』 今井むつみ 秋田喜美 共著 終章 言語の本質

幸運なことに,育休中なので,子育てをしている自分と向き合う時間を確保することができている。その日1日の自分は,子どもにどう対していたか,あの発言はよくなかったなとか,もっと遊ばせてあげればよかったなとか。

どうしても,子どもに悩んだり,考えたりする時間を与えず,先に答えを教えてしまったり,困らないようにやってあげたりしてしまう。

その行動は,子どもの力を信じていないからだと思えるようになった。

なるべく,子どもが自発的に,主体的にできるよう,失敗してもいいように,堂々と失敗できるように,そしてそこから学べるようにしてあげたいものだ。

言語学の話は,少し難しく感じたけれど,子どもがどう言語を獲得していくのか,そのメカニズムを知ることで,普段の子どもへの理解が深まったような気がする。生かさない手はない。

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