子どもにとって、父親とはどんな存在であるべきだろうか。
優しくて、面白くて、なんでも一緒に楽しんでくれる……。
そんな“理想のパパ像”を目指していた時期もある。
でも、育児に深く関わるようになって、思うようになった。
父親は、時に“ルールそのもの”であるべきなのではないか。
“ルールを教える人”ではなく、“ルールとして存在する人”。
それが、子どもの安心と成長につながると思うようになった。
「パパ、どうしたらいいの?」
ある日、娘がこんなふうに聞いてきた。
「どうしたらいいか分からないとき、どうするの?」
そのとき僕は、うまく答えられなかった。
子どもに自由を与えたい、という思いから、「なんでもいいよ」「やりたいようにしていいよ」と言ってきた。
でも、その“自由”は、まだ何も知らない子どもにとっては、“不安”でもある。
選ぶためには、基準が必要。
そして、その基準のひとつが、親――とりわけ父親の言動だ。
父親の役割=「ルールとしての存在」
ルールというと、怒る人、命令する人、厳しい人……というイメージを持たれるかもしれない。
でも、ここで言う“ルール”とは、「軸」や「基準」「変わらない安心感」のことだ。
・寝る時間は8時までと決める
・悪いことをしたらきちんと叱る
・嘘をついたらダメだと教える
・泣いてもいい、でも人を傷つけてはいけない
これらのことを、ぶれずに、感情に左右されずに示していく。
そうすることで、子どもは「迷ったらここに戻ればいい」という“基準点”を持てるようになる。
母親が“安心できる場所”だとすれば、
父親は“迷ったときに進むべき方向を示す指標”であってもいい。
どちらも欠かせない。
家庭における“社会”のモデルとして
家庭は、子どもが最初に出会う“小さな社会”だ。
その中で、父親がルールを守ること・示すこと・徹底することは、
やがて子どもが外の世界で出会う「社会のルール」との橋渡しになる。
・人の話をきちんと聞く
・時間を守る
・感情に流されず、約束を果たす
そういった基本的な姿勢を、父親が実践することで、
言葉ではなく“態度”で子どもに伝わっていく。
「怖さ」ではなく「信頼」で成り立つルールを
もちろん、ルールを押しつけるだけでは意味がない。
怖がらせて言うことを聞かせるのではなく、
「パパはこう思う」「なぜならこういう理由がある」と丁寧に伝えていく。
その繰り返しの中で、
“父親の存在そのものが、ルールである”という状態が育っていく。
おわりに
父親は、面白いだけじゃ足りない。
優しいだけでも足りない。
子どもが迷ったときに、ふと思い出す“軸”であるために。
その背中で、日々の姿勢で、子どもに「生き方のヒント」を伝えていく。
だからこそ、父親は“ルール”であるべきなのだと思う。