【定年後≒育休】と思ったことがある人はたくさんいるのではないだろうか。
つまり【定年後】と【育休中】って似ているところがあるということ。
もちろん,状況によっては全く似ていないが,場合によってはかなり近いのでは,と思ってこの記事をかく。
定年本って?
いわゆる定年について書かれている本。定年論。
キーワードは,【定年退職】【定年後】【定年前】それに加えて,【50代】や【60代】【70代】などの言葉がくっつき,【過ごし方】【働き方】【生き方】などでワンセットとなる。
どうも人間というのは,終わりが見えてくると,その先のこと,次のことに目が向くようだ。もちろん,【期待と不安】どちらが大きいともなく,ある時は「はやく退職したいな」と胸を躍らせ,ある時は「もっと働きたいな」とかみしめ,たいてい「退職後は何をして生きていこうか」と期待も不安も自分の中に同居させることになる。
要するに,定年前は定年後のことを考えてこう過ごしたらいいよ,という本。定年後の生き方について指南されているものが多い。食生活のことや家での過ごし方,夫婦関係,趣味の時間,どうしたらよいかが書かれている。
定年論が書かれたいわゆる【定年本】は毎年くさるほど出版されている。それだけ,定年後どう生きたらいいか悩む人がいて需要があるのだろう。
定年後≒育休中
30代のぼくからすると,「退職」はまだまだ先のことで,仕事をし続けていれば考えたこともなかっただろう。
唯一身近に感じられたのは,自分の父親が退職したときくらいだ。退職後も関連する職に勤務(以前より短時間)し,余暇が増えた父親を見ていると,「育休を取得した自分」と少し重なる部分があった。
勤続40年ほどの定年退職者とたかだか10年そこらしか働いていない(それも年齢,立場などによる責任の重さは雲泥の差)ぼくを比べるのは失礼極まりないことかもしれないが,似ているところもある。
定年後と育休中の共通点
定年退職者と育休パパの共通点は,単刀直入にいうと【仕事をしていない】というところだ。
この【仕事をしていない】という一点だけで,そこから派生する共通項が樹形のように枝分かれする。
仕事をしていない→時間がある。
時間があることで何をする?何に時間を使う?
育休パパは家事や育児だ。定年退職も仕事をしていた時より家事をするだろうし,一定数は孫の面倒をみるという2回目の育児を経験するようだ(ぼくの父親はまさにそう)。
夫婦の時間が増える。
時間がある→夫婦の時間が増える。
これは夫婦で育休を取得した場合や奥さんが専業主婦でパパが育休を取得した場合のみだが,意外とこういう人も多い。さまざまな定年本に書かれているが,この【夫婦の時間】の扱い方で定年後の幸福な人生に大きく関わってくる。
育休中も同じだと思う。今までは仕事に行っている平日の12時間ほどは会わないが,育休中だとそうはいかない。どんな人とも四六時中ずっと毎日同じ家にいるとしんどくなる。
定年本には,突然増えた夫婦の時間をどうしたらよいかということも必ずといっていいほど書かれている。
時間がある→何につかう?
その他,何に時間を使うかこそが,その人間そのものだともいえる。自分や家族,子どもの将来のために勉強をしたり,読書をしたり,趣味の時間にあてたり,旅行をしたり,普段会えない友人と会ったり,平日できなかったランチをしてみたり…。
こうして書いてみると,やっぱり定年後と育休中は似ているなと思う。いずれにせよ,職務としてやらなければならないことはなくなる。それがある意味では,支えだった人も多いはずだ。肩書,立場,経験などさまざまな武器や服で武装できていたが,仕事をしていなければ,ただひとりの個人になる。
そうなったとき,どう生きるか。
実は,男の育休に関しての男の育休論のような本はあまりない(たぶん)。しかし,定年論が書かれたいわゆる【定年本】は毎年くさるほど出版されている。それだけ,定年後どう生きたらいいか悩む人がいて需要があるのだろう。
勝手な想像だが,定年退職後,何をしたらいいかわからなくなったら,とりあえず本屋に行ってそうだ。ネットで【定年 どう生きる】【定年後 何する】などと検索するよりも書店に行って,それらしい本を購入してそうだ。(バカにしているわけではない)
そう考えたぼくは,定年本をいくつか読んでみた!
定年に関する本を何冊か読むうちに,定年前後でしたほうがよいとされていることは,30代だろうが40代だろうが,絶対にしたほうがいい!と思えるものが多かった。
自分が50代になったときにも役立ちそうだし。とはいえ,そもそもぼくたちの時代に【定年】という概念があるのか分からないが。(定年75歳とかあり得そう。)
定年本の選び方
定年本はくさるほどある。と言ったが,どれも同じかと言われるとそうでもない。
当たり前だが,定年本を書くくらいなので,どの定年本も著者は定年退職をしている年齢よりも上であることが多い。(仮に40歳がそんな本を書いていたらふざけるなと言いたい)
つまり,人生の大先輩というわけだ。その道で何十年も生きてきた人たちというわけだ。
その著者が自分の何十年もやってきた専門分野をもとに定年論を語るので,【定年】に対する見方や考え方がちがう。
だから数冊読む価値があるし,選ぶポイントもそこにある。
そこというのは,著者の略歴のことだ。
心理学の観点から定年後の生き方を知りたいなら,心理学者が書いた定年本を読めばいい。
定年後の健康や生活について知りたいなら,医者や学者が書いた定年本を読めばいい。
定年後こそ自分の好きな分野でリスクをあまりとらずに事業を興したり,やりたいことを仕事にできるか自分を試したい人は,実際にそういったことを成し遂げた人の定年本を読めばいい。
定年本は本当にあらゆる分野の人が書いている。
『70歳の正解』/和田秀樹
さっそく著者情報に注目してみよう。
著者は,高齢者専門の精神科医で現在も高齢者医療に携わっている和田秀樹さんという人である。
この人は,本当にびっくりするくらい毎年のように【定年本】を出版している。
『80歳の壁』がベストセラーとなっているので,こちらも読んでみるといい。
さすが高齢者専門の精神科医ということで,医療の観点,健康についてのことが多く書かれている。
健康を維持させることや脳の衰退,ストレスに負けない生活について医者の目線でデータをもとに書かれているところも多く,30代のぼくが読んでも非常に参考になる。
『定年後 50歳からの生き方,終わり方』/楠木 新
以下,アマゾンの著者情報を引用する。
大手生命保険会社に入社し、人事・労務関係を中心に、経営企画、支社長等を経験。勤務と並行して、大阪府立大学大学院でMBAを取得。関西大学商学部非常勤講師を務め、「働く意味」をテーマに取材・執筆・講演に取り組む。2015年、定年退職。現在、楠木ライフ&キャリア研究所代表、神戸松蔭女子学院大学非常勤講師
amazon.jp(「BOOK著者紹介情報」より)
この本の著者である楠木新さんは,一般企業で長く活躍しつながらも,「仕事」や「働き方」をテーマに取材・執筆をしてきた方なので,実際の長く企業で勤めてリタイアした人にとっては,共感する部分も多いのではないだろうか。
この本は,著者の長年の膨大な取材によって得られた貴重な生きた資料をもとに,定年後をどう過ごすか,といった視点で書かれているので,育休中のぼくも,30代のぼくも,普段仕事をしているぼくも読んでも非常に参考になる。
働き方についても,育休明けの仕事復帰後,また読み返したいくらいだ。
『定年をどう生きるか』/岸見一郎
著者である岸見一郎さんについては以下。
哲学者。1956年京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。専門の哲学と並行して、1989年からアドラー心理学を研究。精力的に執筆・講演活動を行っている。著書に『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(ともに古賀史健と共著、ダイヤモンド社)、『アドラー心理学入門』(ベスト新書)、『生きづらさからの脱却』(筑摩選書)、『アドラーをじっくり読む』(中公新書ラクレ)、『幸福の哲学』(講談社現代新書)、『老いる勇気』(PHP研究所)、『成功ではなく、幸福について語ろう』(幻冬舎)、『プラトン ソクラテスの弁明』(角川選書)など多数。
amazon.jp(「BOOK著者紹介情報」より)
今回の『定年をどう生きるか』の著者である岸見一郎さんは,大ベストセラー『嫌われる勇気』の著者でもある。出版当時,流行した【アドラー心理学】の研究者である。
アドラー心理学をもとに,定年後の生き方についての心得のようなものが書かれているので,普段自分が意識していなかった心理学の観点から定年後の自らの生き方を模索できるのではないだろうか。
定年後だろうと,育休中だろうと。
定年後だろうと,育休中だろうと,たとえ仕事をしていようと変わらないのではないか。
生きていく上でたいせつなことは,いつだってたいせつであることに変わりはない。
食生活だって,夫婦生活の心得だって,何歳になっても向上心をもって生きることにしたって,何のために生きているのかを考えることにしたって,子どもであろうが大人であろうが変わらない。
定年本だからといって,なめてはいけない。定年をどう生きるかについてのヒントは,おそらくどの世代の生き方にもヒントになる。
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